生成AIの悪用でサイバー攻撃が進化?企業が今備えるべきセキュリティ対策

2025年12月11日(木)
ChatGPTをはじめとする生成AIの普及は、企業の業務効率を大きく向上させました。
一方で、その“便利な技術”が攻撃者にも利用され始めています。

「AIって便利なものでは?」
「自社のセキュリティは本当に大丈夫だろうか?」
多くの経営者や情報システム担当者が、いま同じ不安を抱えています。

この記事では、生成AIがどのようにサイバー攻撃に悪用されるのか、その実態とリスク、そして企業が今取るべき具体的なセキュリティ対策を、専門家の視点からわかりやすく解説します。

AIによるサイバー攻撃とは?

生成AIがどのように攻撃に使われるのかを理解することは、防御を考える第一歩です。
ここでは、AIが攻撃を支援・自動化する仕組みを紹介します。

生成AIが悪用される仕組み

生成AIは大量のテキストやコードを学習し、自然な文章やプログラムを自動生成できる技術です。
この能力を悪用すると、攻撃者は従来時間と技術を要していた準備作業を短時間で自動化できます。

主な悪用のされ方
  • 公開されている脆弱性情報(CVE)を収集し、攻撃手順を自動生成する
  • フィッシングメールの文面を、自然な日本語で大量に作成する
  • セキュリティ設定ミスを探すためのスクリプトを自動作成する
つまりAIは、これまで熟練した攻撃者だけができた作業を「誰でも」「短時間で」再現可能にしてしまうのです。
このスピードと自動化こそが、生成AI悪用の最大の脅威といえます。

GPT-4などが可能にした“自律攻撃”の実例

米イリノイ大学の研究チームは生成AIモデル(GPT-4)を使い、脆弱性情報を与えるだけでAIが自律的に攻撃手順を作り出す実験を行いました。

結果は成功率87%。
もちろんこれは閉じた実験環境での結果ですが、AIが「自分で考え、実行する攻撃」を現実的に可能にした事例として注目されています。

このような自律攻撃では、AIが次のようなサイクルを自動で繰り返します。

  1. 脆弱性情報を解析
  2. 攻撃スクリプトを生成
  3. 実行し、結果を評価
  4. 改善して再攻撃
つまり、人間の判断を挟まずに学びながら攻撃を最適化していくのです。
現時点では実験段階ですが、攻撃のスピードと効率化が一気に進む可能性を示しています。

企業が直面する新たなリスクとは?

AIによる攻撃の自動化は企業に新しいタイプのリスクをもたらします。
特に注意が必要なのが、公開直後の脆弱性を突く「ワンデイ脆弱性攻撃」です。

ワンデイ脆弱性の危険性と放置リスク

ワンデイ脆弱性とは、脆弱性の情報や修正パッチが公開された直後に狙われる欠陥のことです。多くの企業がパッチ適用までに数日〜数週間かかるため、その「空白の時間」が攻撃の好機となります。
AIがこの情報を瞬時に分析し、攻撃コードを生成できるようになると攻撃までのスピードは人間の比ではありません。対応が遅れれば、以下のようなリスクが高まります。

  • 顧客情報や社内データの漏洩
  • Webサービスの改ざんや停止
  • 信頼失墜によるブランドダメージ
脆弱性を放置することは、鍵をかけ忘れたまま出かけてしまうようなものです。
AIの高速化に対抗するには、発見から修正までの時間をいかに短縮できるかが大切です。

GPTを使った攻撃が何を変えるのか?

AIの活用で変わるのはスピードだけではありません。
攻撃の質そのものも高度化しています。

生成AIは過去の攻撃データやパターンをもとに、新しい手法を自動的に組み合わせることができます。その結果、既存のセキュリティ製品では検知しにくい未知の攻撃パターンが生まれやすくなっています。

また、AIが生成するフィッシングメールは日本語でもとても自然になっており、人間が見分けるのは困難になっていくでしょう。従業員がうっかりリンクをクリックすれば、社内ネットワーク全体が侵入経路となり得ます。

AIの登場により、攻撃はより巧妙に、そして大量に発生する時代になりました。
だからこそ、セキュリティ対策もAIの進化に合わせてアップデートする必要があります。

AIを使った新たな脅威にどう備える?

ここからは、企業が今すぐ実践できる具体的なセキュリティ対策を紹介します。
AIを使用した攻撃でも、基本の徹底こそが最大の防御となります。

脆弱性診断とパッチ管理の徹底

AIが脆弱性を突くスピードを上げている今、防御側も「早く見つけ、早く直す」体制を作る必要があります。

まず重要なのは、定期的な脆弱性診断です。
ツールによる自動スキャンと専門家による手動診断を組み合わせることで、広範囲かつ高精度に弱点を洗い出すことができます。

次に、パッチ管理の自動化です。
更新作業を手動で行っている企業はまだ多いですが、AI攻撃時代では致命的な遅れになります。自動更新と優先順位付けを行う仕組みを導入し、重大脆弱性は48時間以内の対応を目指すのが理想です。

DIT Securityでは、こうした脆弱性診断を効率化するサービスを提供しています。
自社のセキュリティレベルを一度健康診断してみることをおすすめします。

WAFや振る舞い検知など多層防御の導入

脆弱性対策と並んで重要なのが、「多層防御」の考え方です。
多層防御とは、攻撃を「入口で防ぎ、侵入後も検知・封じる」複数の防御ラインを重ねる戦略です。具体的には以下のような組み合わせが有効です。

  • WAF(Webアプリケーションファイアウォール):Webサイトへの攻撃を遮断
  • EDR(端末防御):社員PCやモバイル端末の異常を検知
  • 振る舞い検知:通常とは異なる挙動をAIが監視
  • SIEM/SOAR:ログの相関分析や初動対応の自動化
これらを連携させることで、未知の攻撃にも素早く対応できます。
DIT Securityでは、企業のシステム規模やリスクに合わせた最適な防御構成を提案しています。

DIT Securityによる最新のAI攻撃対策支援

AI攻撃の脅威に対抗するには、技術・運用・人材が必要です。
DIT Securityでは、次のような総合的なセキュリティ支援を提供しています。

  • 脆弱性診断
  • パッチ適用の自動化支援と運用ルールの設計
  • WAFなどの多層防御システム導入支援
  • ペネトレーションテスト(擬似攻撃)による実践的検証

まとめ

生成AIの登場は、攻撃者の手法とスピードを根本から変えつつあります。
しかし、脆弱性診断・パッチ管理・多層防御といった基本を着実に行えば、十分にリスクを抑えることができます。

 DIT Securityは、企業の現場に寄り添いながら、AI時代のセキュリティを支えるパートナーとして支援を行っています。

まずは無料相談から、お気軽にご相談ください。

執筆者情報

長谷川敬一のプロフィール写真

ITセキュリティ事業部 ソリューション営業部 部長

長谷川 敬一(はせがわ けいいち)

業界歴35年以上。インターネット黎明期より数々の有名サイトの構築・運営に携わる。自身が運営した大規模サイトでサイバー攻撃による被害を経験したことをきっかけに、サイバーセキュリティ分野へ転身。現在は、企業向けにセキュリティコンサルティングや導入支援を中心とした活動を行い、豊富な経験と実績を活かして多くの企業の情報資産を守っている。