Claude Mythosとは?Claude Fable 5・GLM-5.2から考えるAI時代のセキュリティ対策
2026年7月22日(水)
今や生成AIは、文章を作ったり情報を整理したりするだけのツールではなくなっています
最近では、大量のソースコードを読み込み、問題のある箇所を探し、修正案やテスト方法まで考えるAIモデルが登場しました。
こうした進化は、ソフトウェア開発を効率化するうえで大きな助けになります。一方で、脆弱性を見つける力がサイバー攻撃の準備に使われる可能性も無視できません。攻撃側と防御側のどちらも、これまでより速く動ける時代に入りつつあります。
その象徴として注目されているのが、AnthropicのClaude Mythos 5と一般向けに提供されるClaude Fable 5です。
さらに、中国のZ.aiからは、長時間のコーディングやエージェント作業を想定したGLM-5.2も登場しています。Claude Mythos 5は一般公開されておらず、重要なソフトウェアの防御などに携わる限られた組織へ提供されています。Claude Fable 5は同じ基盤モデルを用いながら、安全機構を加えた形で広く提供されているモデルです。
本記事では、Claude MythosやClaude Fable 5、GLM-5.2がなぜ注目されているのかを整理したうえで、ミュトス級AIの登場によって企業のセキュリティ対策がどう変わるのかを解説します。
Claude Mythos(ミュトス)とは?
「Claude Mythos」と呼ばれているものには、先行提供されたClaude Mythos Previewと、その後に発表されたClaude Mythos 5があります。
ここではなぜサイバーセキュリティ分野で注目を集めているのかを見ていきましょう
Claude Mythosは高度な脆弱性発見能力で注目されたAIモデル
Anthropicは2026年4月、重要なソフトウェアをAI時代の脅威から守る取り組みとして「Project Glasswing」を発表しました。
このプロジェクトで防御側の組織に提供されたのが、同社の高性能モデルであるClaude Mythos Previewです。開始時点では、AWS、Apple、Google、Microsoft、Cisco、Linux Foundationなどのパートナーに加え、重要なソフトウェア基盤を開発・保守する40以上の組織にもアクセスが認められました。
一般公開ではなく限定提供となっているのは、脆弱性を発見する力が、防御だけでなく攻撃にも使われ得るためです。
ソフトウェアの弱点を見つける能力は、開発者にとっては修正の助けになりますが、攻撃者の手に渡れば、侵入経路を探したり、悪用方法を考えたりするために使われる可能性があります。
「ミュトス級AI」がサイバー攻撃と防御の両方に影響する理由
脆弱性とは、ソフトウェアやシステムに残されたセキュリティ上の弱点で、プログラムの処理ミスや認証設定の不備、想定していなかった入力への対応不足など、さまざまな原因で生まれます。
これまで複雑な脆弱性を見つけるには、ソースコードを読み解き、実際の動作を確認しながら問題を切り分ける高度な知識が必要でした。
高性能AIは、大量のコードを読み込み、処理同士の関係を追いながら、不自然な実装や危険な箇所の候補を洗い出すことができます。防御する側がこの能力を使えば、人の目だけでは見落としやすかった欠陥を素早く見つけ、攻撃される前に修正できるようになります。
ただ一方で攻撃する側が同じ能力を利用すると、公開されているソフトウェアや技術情報を短時間で分析し、悪用できそうな箇所を効率よく探せるようになるかもしれません。開発元が把握していない脆弱性を先に見つけられた場合、修正プログラムが出る前に狙われる「ゼロデイ攻撃」へ発展するおそれがあります。
Claude Fable 5との違い|一般利用と安全機構の位置づけ
Claude Fable 5とClaude Mythos 5は、同じ基盤モデルを使用しており、その違いは主に提供対象と安全機構にあります。
Claude Fable 5は、Anthropicが広く提供しているモデルの中で最も高性能なモデルとして、Claude APIやAmazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundryなどから利用できます。長い文章や大量のコードを扱える100万トークンのコンテキストを備え、複雑な推論や長時間のエージェント作業を想定して設計されています。
一方、Claude Mythos 5は一般提供されていません。
Project Glasswingを通じて承認された組織に限定されており、Claude Fable 5に設けられている一部の安全分類器を外した構成になっています。防御目的の脆弱性調査など、一般向けモデルでは制限される可能性がある専門作業を行えるようにするためです。
一般的なコード作成、レビュー、テスト、システム設計などではFable 5の能力を活用しつつ、危険性の高い依頼には制限をかける。承認された防御組織には、より踏み込んだ調査を行えるMythos 5を提供する。
このように、同じ高性能モデルでも利用目的に応じて提供方法を分けている点が特徴です。
Claude Fable 5・GLM-5.2の登場で何が変わるのか
高度なコーディングや長時間の自律作業に対応するAIは、Anthropicだけのものではありません。
GLM-5.2の登場からもわかるように、AIモデルの高性能化は複数の企業による競争として進んでいます。
Claude Fable 5は長時間タスク・コーディングに強いモデル
Claude Fable 5は、短い質問へ答えるだけでなく、複数の工程にまたがる長い作業を進めることを想定されたモデルです。Anthropicは大規模なコード変更、複雑な機能開発、調査、テストなど、長期間にわたる仕事へ対応できると説明しています。自分で作業計画を立て、必要な処理を進め、結果を検証する点が従来モデルとの大きな違いです。
これまでの生成AIでも短いコードは作れましたが、大規模なシステム全体を理解しながら何十ものファイルを修正する作業では、途中で整合性を崩すことがありました。扱える情報量とエージェント能力が向上すると、システム全体の関係を見ながら、より長い作業を続けやすくなります。
企業にとっては、開発や保守を効率化できる大きなメリットがあります。
古いシステムの移行やテストコードの作成、ドキュメント整備など、これまで人手不足で後回しになっていた作業を進めやすくなるでしょう。
ただし、AIへ任せる範囲が広がるほど、権限管理も慎重に行わなければなりません。
コードリポジトリやサーバ、クラウド環境へ自由にアクセスできる状態で使うと、誤った変更がそのまま反映されるおそれがあります。実行前の承認、操作ログの保存、変更を元に戻す仕組みなどを含めて運用する必要があります。
中華モデルGLM-5.2のような競合モデルも高性能化している
中国企業のZ.aiが提供するGLM-5.2も、長時間のコーディングやエージェント作業を重視したモデルです。100万トークンのコンテキストに対応し、大規模な実装、自動調査、性能改善などの長期タスクを想定して訓練されているとされています。
セキュリティ面で注目すべきなのは、高度なコード解析や長時間作業が一部の限られたモデルだけの能力ではなくなってきた点です。利用できる選択肢が増えれば、開発者は便利になります。
その一方で、悪意を持つ利用者も高性能な技術へ近づきやすくなります。
ただし、オープンなモデルだから危険、非公開のモデルだから安全と単純に分けることはできません。
実際のリスクは、モデルの性能だけでなく、利用者の管理、アクセスできるデータ、実行環境、ログ、権限設定によって変わります。企業がAIモデルを採用する際は、性能比較だけでなく、どの情報を渡し、何を実行させるのかまで確認することが求められます。
AIの高性能化で「専門家しかできなかった攻撃準備」が近づく
これまで、高度な脆弱性を見つけて悪用方法を検証するには、OSやネットワーク・認証・プログラム構造などに関する深い知識が必要でした。高性能AIは、こうした専門作業をすべて代わりに行うわけではありませんが、人間が調査を進めるためにサポートしてくれます。
例えば、大量のコードから問題になりそうな箇所を探す、エラーの原因を整理する、検証用コードを作るといった作業はAIが得意とする領域です。経験が浅い人でも、AIから説明や候補を得ることで、以前より高度な分析を行うことができるようになります。
ただ一方で、攻撃者が同じ能力を使えば、対象を調べる時間や試行回数を増やせる可能性があります。
脆弱性が公開されてから攻撃に使われるまでの時間が短くなると、パッチ適用や設定変更を後回しにしている環境ほど狙われやすくなります。防御側にも弱点を早く見つけ、優先順位をつけて直す仕組みが必要になります。
ミュトス級AIが企業にもたらすサイバーセキュリティリスク
ミュトス級AIの話は、AI開発会社や研究機関だけに関係するものではありません。
企業が利用しているWebサイト・業務システム・クラウド・ネットワーク機器にも、同じ変化が影響します。
未知の脆弱性が見つかりやすくなる
企業のシステムは自社で開発したプログラムだけで動いているわけではありません。
OSやデータベース、クラウドサービス、オープンソースソフトウェア、外部APIなど、多くの要素が組み合わされています。
高性能AIがコードや設定を広い範囲で解析できるようになると、これまで見つかりにくかった不具合や複数の条件が重なったときだけ表れる問題も発見しやすくなります。防御側が先に見つけることができるようになれば、攻撃される前に不具合を修正できます。
問題は攻撃側に先に見つけられた場合です。
開発元がまだ把握していない脆弱性や、修正前の弱点が悪用されると、従来のパターンだけを見ているセキュリティ製品では防げない可能性があります。
攻撃の自動化・高速化が進む可能性
AIエージェントは、目標を伝えると必要な工程を分け、ツールを使いながら作業を続けられます。情報収集やコードの分析、仮説の検証、テストといった作業を、人の指示を細かく待たずに進めることも可能です。
この能力が悪用されれば、攻撃対象の調査や弱点探しが効率化されてしまう可能性があります。
攻撃者が一つひとつ手作業で調べていた工程をAIが行うようになれば、同じ時間でより多くの対象を調べ上げられてしまいます。
セキュリティ担当者の負荷が増える
攻撃の調査や試行が速くなれば、防御側へ届く脆弱性情報やアラートも増えていきます。担当者が同じ人数のまま通知だけが増えると、本当に危険な兆候が埋もれるおそれがあります。
セキュリティ製品を導入していても、アラートを受け取るだけでは被害を止められません。誰が確認し、どの状況ならシステムを隔離し、どこまでを経営層へ報告するのかを決めておく必要があります。
AIは、防御側の負担を減らすためにも活用できます。
大量のログから不審な動きを絞り込む、脆弱性情報と自社のシステムを照合する、調査内容を要約するといった作業は、AIと相性のよい分野です。
ただし、AIの判断だけで端末やサーバを自動停止すると、誤検知によって業務が止まる可能性もあります。定型的な整理はAIへ任せ、業務影響を伴う判断は人が行うなど、役割を分けることが必要です。
セキュリティ担当者の負担を減らすには、ツールを増やすだけではなく、人員・外部の専門家・監視サービス・緊急時の手順などを組み合わせ、検知から対応までが途中で止まらない体制を作ることがポイントになります。
企業が今見直すべきAI時代のセキュリティ対策
企業としてまず確認すべきは、脆弱性管理、資産管理、監視、バックアップといった基本的な部分が実際に機能する状態になっているかどうかです。
脆弱性診断を定期的に実施する
脆弱性診断は、Webアプリケーション、サーバ、ネットワーク機器などを調べ、攻撃に使われるおそれのある弱点を見つけるものです。問題を先に把握できれば、攻撃される前に修正したり、代替策を講じたりできます。
診断は一度実施して終わりではなく、システムへ新しい機能を追加したり、クラウド設定を変更したり、外部サービスと連携したりした際に再度必要になります。
また、診断結果を受け取った後の運用も大切です。
誰が修正するのか、いつまでに対応するのか、すぐに直せない場合はどのような代替策を取るのかまで決めてきましょう。
定期診断は、AI時代でも変わらないセキュリティ対策の基本であり、以前より優先度が高まる対策です。
外部公開資産と設定不備を把握する
企業が把握していないサーバや管理画面は、対策の対象から漏れやすくなります。
過去のプロジェクトで使ったテスト環境、担当者が個別に契約したクラウド、利用を終えたVPN装置などが、インターネット上に残っているケースもあります。
まずは、Webサイト、API、VPN、クラウドストレージ、リモート管理画面など、外部から接続できる資産を一覧にします。そのうえで、利用目的、管理責任者、公開範囲、更新状況を確認しましょう。
不要なものは停止し、必要なものには多要素認証、アクセス元制限、パッチ適用、ログ監視などを組み合わせます。
公開時のチェックだけでなく、定期的に棚卸しする仕組みも用意しておくと、担当者の異動やシステム変更による見落としを減らせます。
検知・監視・初動対応の体制を整える
脆弱性を減らしても、侵入を完全に防ぐことは困難です。未知の脆弱性や認証情報の窃取、委託先経由の侵入など、予防だけでは止めにくい経路もあります。そのため、侵入後の異常に早く気づき、被害が広がる前に対応する仕組みが必要です。
EDRやログ監視、SOCなどは不審な通信、権限変更、大量のファイル操作といった兆候を見つける助けになります。どのアラートを緊急扱いにするのか、夜間に誰へ連絡するのか、端末やサーバを隔離する判断を誰が下すのかまで決めておきましょう。
初動対応では、被害の封じ込めと証拠保全を両立させなければなりません。
焦って端末を初期化したり、ログを消したりすると、原因や影響範囲を調べられなくなることがあります。ネットワークからの隔離、ログの保存、社内外の連絡、専門家への相談を含めた手順をあらかじめ用意しておきましょう。
また、定期的な訓練も有効です。担当者が不在の場合や、基幹システムが同時に停止した場合など、実際に起こり得る条件を想定すると、文書上では見えなかった連絡漏れや判断の遅れを確認できます。
ランサムウェア対策とバックアップ保護も同時に考える
脆弱性が悪用された先で、ランサムウェアによる暗号化や情報窃取が行われる可能性があります。侵入経路を減らすことはもちろん大切ですが、侵入された場合にも重要なデータと復旧手段を守れるようにしておかなければなりません。
バックアップは、取得しているだけでは安心できません。本番環境と同じ認証情報で操作できる、常時ネットワークへ接続されている、書き換えや削除が容易であるといった状態では、ランサムウェアの影響を同時に受けるおそれがあります。
保護すべき対象は一般的な文書ファイルだけではありません。
データベースやアプリケーション、設定ファイル、バックアップデータなど、業務再開に必要な情報を整理する必要があります。保存先の分離、権限の分離、イミュータブル化、世代管理、復元テストを組み合わせて、攻撃を受けても復旧の選択肢を残せるようにしましょう。
DIT Securityで支援できること
高性能AIによって脆弱性の探索が速くなる時代には、攻撃前に弱点を把握することと、侵入後の被害を広げないことの両方が欠かせません。
DIT Securityでは脆弱性診断、Web改ざん対策、ランサムウェア対策を通じて、異なる段階のリスクに対応しています。
脆弱性診断で攻撃される前に弱点を把握する
高性能AIが注目される現在、企業側も攻撃者より先に自社の弱点を把握する姿勢が欠かせません。DIT Securityの脆弱性診断では、Webアプリケーションやシステムなどを対象に、攻撃へ悪用されるおそれのある問題を確認できます。
社内ツールだけで診断した場合、検出結果が本当に危険なのか、誤検知なのか、どのように修正すべきか判断しにくいことがあります。専門家の視点を加えることで、結果を実際の改善へつなげやすくなります。
新しく公開するシステムだけでなく、長く運用しているWebサービスや、外部連携を追加したシステムも確認対象です。Claude MythosやGLM-5.2のような高性能AIが登場した今、自社の診断範囲や実施頻度が現在のリスクに合っているかを整理することが、対策の出発点になります。
Web改ざん対策で被害を早期検知・復旧する
脆弱性を突かれてWebサイトやサーバ内のファイルが書き換えられると、偽ページの表示、マルウェア配布、情報窃取などにつながる場合があります。発見が遅れるほど、利用者や取引先への影響も広がります。
DIT SecurityのWebARGUSは重要なシステムやデータへの改ざんをリアルタイムで検知し、元の状態へ復旧するソリューションです。入口で攻撃を防ぐだけではなく、突破された後の実害を抑えることを目的としています。
AIによって攻撃者の調査速度が上がれば、すべての攻撃を事前に止めることはさらに難しくなる可能性があります。そのため、改ざんが起きた瞬間に気づき、公開停止や手作業での復元を待たずに元へ戻せる仕組みが役立ちます。
SentinelARGUSで重要データ・バックアップを保護する
ランサムウェア被害では、業務データだけでなく、システム設定やバックアップまで暗号化・削除されることがあります。復旧に必要な情報を失えば、バックアップを取得していたとしても事業再開までに時間がかかります。
DIT SecurityのSentinelARGUSは、守りたいデータやシステムをイミュータブル化し、不正な暗号化、改ざん、削除から保護することができます。一般的な業務データに加え、アプリケーションデータ、DBファイル、設定ファイル、バックアップファイルなどを保護対象として設定できます。
AIの高性能化によって攻撃準備が効率化する可能性がある時代には、入口の防御だけでなく「侵入されても重要データを壊されない状態」を整えておくことが事業継続につながります。
ご興味のある方はSentinelARGUSページで詳細をご確認ください。
まとめ
Claude Mythos 5は、サイバー防御などに携わる限られた組織へ提供されている高性能AIモデルです。
一般向けのClaude Fable 5は、同じ基盤モデルに安全分類器を加え、危険性の高い依頼を制限しながら利用できる形で提供されています。GLM-5.2のように、長時間のコーディングやエージェント作業に対応する競合モデルも登場しており、高性能AIは一部の企業だけが持つ技術ではなくなりつつあります。
これらのAIは、ソフトウェア開発や脆弱性修正を助ける心強い技術ですが、一方で、攻撃者による情報収集やコード分析も効率化する可能性があります。企業には、AIを必要以上に恐れるのではなく、攻撃側と防御側の速度がともに上がることを前提にした備えが必要です。
DIT Securityでは、攻撃前の弱点を確認する脆弱性診断、Web改ざんを検知・復旧するWebARGUS、重要データやバックアップを保護するSentinelARGUSを提供しています。
自社のどこにリスクがあり、どの対策から進めるべきかをお悩みの方はぜひDIT Securityまでご相談ください。
